読書・書評

漫画『キングダム』以後の世界を描く!司馬遼太郎の『項羽と劉邦』から学ぶ「経営成功の秘訣」

OMNI16

東京都在住。クリエイティブやアート、リベラルアーツが大好き。

今日は、司馬遼太郎の小説『項羽と劉邦』の魅力を紹介します!

『項羽と劉邦』は「人材学の宝庫」

先月半ばの話になりますが、今までずっと「読もう読もう」と思っていながら、なかなか読めていなかった『項羽と劉邦』を、ようやく完読することができました。

とある私のメンターが、次のように言っていたのが、そもそもの読むきっかけでした。

(項羽と劉邦の時代は、)「人材学の宝庫」でもあるし、ある意味では、「政治学のテキスト」にもなるようなものがそうとう隠されている。また、別の意味では、「大きな国を統一する」という考え方のなかに、大企業や世界企業をつくっていくような考え方が入っているとも言える」

実際に読んでみた結果...

まさに、政治や企業経営における成功法則や人間学の智慧が詰まった小説で、私自身、刺激を受けるところや考え方のヒントがたくさんありました。

 

項羽と劉邦の時代ー『キングダム』の時代の直後

時代的には、言わずと知れた超人気マンガで、現在実写映画も公開されている『キングダム』の数十年後にあたります。

eiga.com

『キングダム』は、後に始皇帝となる嬴政(えいせい)が、大将軍を志す信(しん)と共に、中華統一を目指すというストーリーです。

項羽と劉邦の時代は、そんな始皇帝が中華を統一してできた「秦」という大帝国が崩壊するところから幕を開けます。(ちなみに秦は統一後たった15年で崩壊します)

まさに、この『項羽と劉邦』の見所・面白さは、始皇帝がつくった秦帝国の滅亡後に起こった天下統一の争いの中で、「力は山を抜き、気は世を覆う」とまで言われた最強の覇王・項羽(楚軍)を、一介の田舎の無頼漢(ごろつき)だった劉邦(漢軍)が、百戦百敗の末に破るところにあります。

一対一の戦いでは万に一つも勝ち目がない劉邦が、さまざまな人材の力を統合し、組織をつくりあげていく中で、次第に項羽を圧倒し、最終的には自刃にまで追い込み、その後、前漢・後漢を合わせて400年間続く漢帝国の初代皇帝にまで上り詰めるというストーリーです。

項羽や劉邦だけでなく、天下無双の軍事的英雄である大将軍の韓信(かんしん)や、補給・兵站の面で常に劉邦を後方から支え続けた名宰相の蕭何(しょうか)、劉邦のそば近くで戦略戦術を献策した大参謀長・張良(ちょうりょう)、その他、個性豊かで魅力的な人物たちが数多く登場しながらストーリーが展開し、一つの壮大なドラマが織りなされていきます。

私自身、この物語の中に、組織を大きくしていく秘訣や、チーム力の向上のためのエッセンスがたくさん含まれていると感じました。

 

なぜ百戦百敗の劉邦が、覇王・項羽を制したのか

項羽と劉邦、どちらからも学ぶべきところがたくさんあります。

項羽からは、“小よく大を制す”という「起業家精神」

項羽の決断力、統率力、スピード感、勇猛果敢さ、直情径行ぶりは圧倒的で、まさに軍神。

標的・ゴールを決めたら次元を歪めてでも必ずそれを成し遂げるという気概とスピード感はものすごいものがあります。(特に、20万の秦帝国軍をわずか数万の軍で破るシーンは圧巻です)

一方の劉邦から学べることは、多様な才能を使いこなして大事業を成し遂げる「帝王学」です。

劉邦はとても弱いのですが、得体の知れない徳と器があり、その人間臭い魅力に引かれて、多くの優秀な人材が配下に集まっていきます。

その劉邦が天下を取れた理由は、具体的に言えばキリがないほどたくさんあるのですが、あえて大きく3つのポイントにまとめます。

ポイント

①人事(人材登用・人心収攬)と兵站(食糧・資金)を重視し続けたこと

②第三勢力(彭越、黥布)を巻き込み、味方につけたこと

➂天機を逃さずに(最後の)勝負をかけられたこと

詳しくは、ぜひ小説を読んでいただければと思いますが、結局、決断・判断の積み重ねが縁起となって、組織の成功・失敗が決まっていくことがわかります。

また、劉邦やその配下の人材が持つ「人材の活かし方」の智慧は非常に参考になります。

項羽の場合、その神がかり的な強さに部下たちは付いていくのですが、劉邦の場合は、そのような統率力はないので、仕事や報酬の与え方を工夫することで、配下の諸将たちのやる気を引き出して、動かしています。

その辺の人間心理の気脈に通じていたところや、強みをもって人を活かしたところが、最終的に劉邦軍が勝利を得た理由なのでしょう。

私も、高校生のときから一代にして大組織や世界企業をつくりあげるという物語にロマンを感じていたので、項羽と劉邦の物語は、とても参考になりましたし、折に触れて読み返したい本になりました。

ぜひみなさんも読んでみてください。

  • この記事を書いた人
  • 最新記事

-読書・書評

© 2024 CORESIGHT Powered by AFFINGER5