ビジネス 書評

【本レビュー】『自分の小さな「箱」から脱出する方法』

OMNI16

「人文知」と「事業」の探究者|法人1社と個人事業1つを経営|大学卒業後、内定企業を蹴って人文知・リベラルアーツを濃密に学ぶ道へ|その後、財務・IT分野を経験して独立|リベラルアーツ・歴史・哲学・経済|

今日は最近読んで印象に残った本について紹介したいと思います。

『自分の小さな「箱」から脱出する方法』を読む!


非常に有名な本ですね。

ビジネス書に分類されると思いますが、物語形式なので読みやすいです。

詳細な内容はネット上にもたくさん出ているので、ここでは私なりの理解や解釈を簡単にまとめたいと思います。

「箱」って何?

この本では、自分(たち)の「あり方(Being)」が、人間関係やコミュニケーション、ひいては組織の生産性に大きな影響を与える、ということを「箱」という比喩・概念を使って、わかりやすく示しています。

簡単に言えば、人が「箱の中」に入っている状態というのは、他人を単なるモノや厄介者、問題として見ている状態です。本の中では、「自己欺瞞」の状態とも言われています。いわば、歪んだ目で人を見ている状態と言っていいでしょう。

反対に、「箱の外」に出ている状態というのは、他人を、自分と同じような感情もニーズもある一人のあるがままの人間として見ている状態です。

この2つの「あり方」の違いによって、たとえ表面的には同じ言動(Doing)を取ったとしても、それに対する他人の反応は全く違ってきます。人はその人の言動ではなく、その奥にあるその人の「あり方(箱の外にいるか、中にいるか)」に反応するからです。

人はまず、相手の行動にではなく、相手のありよう、つまり相手が自分に対して箱の中にいるか外にいるかに対して反応する(P75)

人が他の人々にどのような影響を及ぼすかは、行動よりも深いところにあるものによって決まる。(P82)

たとえば、部下に対して厳しい注意をしたりするようなシチュエーションの場合でも、自分が「箱の外」にいる状態で注意するのと、「箱の中」にいる状態で注意するのとでは、部下の反応は全く違ってきます。同じハードな態度でも、前者はやる気を引き出し、後者は反抗や悪感情を引き出してしまいます。

そして、人は「箱の中」に入ってしまうと、「自己正当化の罠」にはまっていきます。「悪いのは相手であって、自分は悪くない」という状態ですね。つまり、「自分にも問題がある」ということが見えなくなっていきます。

 

自分の「あり方(Being)」が引き寄せるものを変える

本の中にも出てくる例ですが、夜遅く帰ってくる息子に対して、「箱の中」に入っている母親は、「無責任で厄介者の息子」と感じ、口うるさく注意するという行動に出ます。

そうすると、息子はますます母親に対して反発を感じ、そんな母親のいる家に早く帰ろうという気にならなくなる、という悪循環に陥ります。

本当は、この母親は息子に早く帰ってきてほしいのに、自分のあり方によって、かえって「遅く帰ってくる息子」を作り出してしまっているわけです

自分を正当化するために、そのための問題を創造してしまっているわけですね。この場合、母親は息子のことを手を貸し上げるべき一人の人間としてではなく、叱る対象(モノ)としてしか見ておらず、その母親のあり方(Being)を感じて息子は反発している、ということになります。(お互いがお互いに対して「箱の中に入っている」状態になることを、この本の中では「共謀」と言っています)

ここで重要なポイントは、自分の「あり方(being)」が引き寄せるものを変えてしまうということです。本来、人間関係などにおいて、自分が望んでいないものを引き寄せてしまってる場合、自分のあり方を見つめなおすサインとして捉えてみることが必要になるわけです。

さらに、箱の中にいる人は、自分にしか関心がない状態、自分ことしか考えていない状態になります。そうすると、必然的に「仕事の成果や結果」に集中できなくなります。この状態が組織全体に蔓延したときに、組織の生産性が低下するわけです。

各人が本来集中すべき成果にコミットできず、お互いが足を引っ張り合ったり、責め合ったりするようになるわけです。

 

「箱」から出るにはどうすればいいのか?

では、「箱の中」から出るにはどうしたらいいのか?

ポイント

自分が他の人のためにすべきだと感じたことに背く行動を取らないこと(「自分への裏切り」から自由になること)

相手を自分と同様きちんと尊重されるべきニーズや希望や心配ごとをもった一人の人間として見るようにすること

箱の外にいるよりも、箱の中にいるほうがはるかにしなければならないことが多く、負担が大きいということを自分自身で感じること

周りの人のためにも、箱の外に出よう、箱の外に居続けようと思うこと

などが挙げられています。

簡単に言ってしまえば、自分のことは一端脇において、周りの人にも目を向けて、自分が何ができるか考えよう!ということなのかなと思います。

そして、この本には書いてないですが、さらに一歩進めて、私が感じたことがあります。

それは、人間関係の根本は「自分自身との関係」だと捉えたときに、人に対してだけでなく、自分に対しても箱の中に入っていないかを考えることが重要なのでは?ということです。

 

自分自身を「あるがままの人間」として捉える。

自分自身も一人のあるがままの人間としてとらえる。心配事、悩み、ニーズや感情を持った人間としてとらえる、ということです。これって意外に、自分も含めて、できている人は少ないんじゃないかと思ったんです。心理学でいうところの「自己受容」ってやつですかね。

特に、人の顔色を窺って、自分の言いたいことが言えなかったり、NOと言えない人たちって、自分をある意味単なるモノとして扱っている部分があるような気がします。

この本で扱っている「箱の中の人」の人物像というのはどちらかというと「他責の人」、自分を正当化し、他人を責める人という感じです。しかし、世の中には、「自責の人」、自分自身を責めがちな人も多いはずです。

この両者は正反対のように見えますが、「箱の中に入っている」という意味では同じなのではないかと思うのです。それが人に対してか、自分に対してかの違いだけです。

だから、人に対してだけでなく、自分に対しても箱の中に入っていないか、自分自身をあるがままの人間として認め、その気持ちやニーズを尊重しているかどうかを問いかけることを忘れないことです。その自分自身に対する「あり方」こそが、本当の人間関係や生産的な組織を築いていく上で最も大切なことではないでしょうか。

ぜひみなさんの参考になれば幸いです!

  • この記事を書いた人
  • 最新記事

OMNI16

「人文知」と「事業」の探究者|法人1社と個人事業1つを経営|大学卒業後、内定企業を蹴って人文知・リベラルアーツを濃密に学ぶ道へ|その後、財務・IT分野を経験して独立|リベラルアーツ・歴史・哲学・経済|

-ビジネス, 書評

© 2024 CORESIGHT Powered by AFFINGER5